モミジの剪定

剪定の中で一番難しいのはどの木ですかと聞かれることがあります。造園家の得手不得手は様々ですが、一般的によく言われるのは「モミジ」です。その理由は剪定後にモミジの自然樹形のしなやかさ、風に揺れるような雰囲気を残すのが難しいからです。モミジの自然樹形は下の写真のような感じです。

モミジの自然樹形

北大の庭にあるモミジの自然樹形です。横広に枝がしなやかに伸び、輪郭が適当に不揃いで柔らかい曲線が連なり,枝の間隔が適度にあり、薄っすら枝が見えて、後景もチラチラ見えることにより景色に奥行を生じさせ、全体的に何とも言えないふんわり、ゆったり感を生み出していますね。これ見てて癒されませんか。剪定後もこの形を維持できればいいですね。ちなみに、このモミジ恐らく剪定していません。自分の自然な形を保つために不要な枝をモミジが自分で落とした結果の形です。樹木には生きるだけでなく、美しさを保つためのしくみがちゃんと植えこまれています。自然は素晴らしい、驚異の世界ですね。

剪定とはざっくり簡単に言うと、木のサイズや枝葉の濃度を少なくすることなので、そのために枝葉の混みあったところの枝を抜いたり、枝先を切ることになります。そうするとどうしても「カチッ」とした硬い雰囲気になりがちです。それは、モミジの自然樹形とは対極にあるのでそうならないような切り方が必要です。ではどうしたらよいのか。「百聞は一見に如かず」。先ず下の写真をご覧になっていただき剪定前と後のモミジを見比べてください。そして違いを生み出している要素が何か考えてみてください。

剪定前                   

これはヤマモミジです。なんとなく自然樹形がイメージできるでしょうか。横にゆったり広がる枝の流れがモミジらしさです。この写真では上向きの枝がその自然樹形を乱しています。

剪定後

上向きの枝を除き、濃さの原因となっている重なっている枝、などを除き、幹枝の流れや葉の輪郭がある程度はっきりするように不要な枝をのぞきました。薄っすら向こうが見えるくらいが丁度いいです。

剪定前、後を見比べていかがでしょうか。剪定後の方が前に比べて、庭の奥行きが出ているように感じませんか。私が心掛けているのは、モミジの場合大切なのは「切りました」と分かるような剪定にならないということです。依頼主はもちろん剪定前の姿を知っているので、剪定後との違いが判るのですが、剪定前の姿を知らない人が見て切ったという感じがしない、そのままその姿で自然にそこにいたと感じるような剪定です。

剪定後の写真を見て何か気づかれたでしょうか。枝先を切っていません。なぜか?枝先を切ると自然な流れが止まり「固まる」からです。では、どうやってサイズを小さくするのか、不用な枝を懐までたどって、切ることです。特にモミジの自然樹形を乱している真上に立ち上がっている枝は枝元までたどってきっちり切ります。ただ、樹形の中で穴が開くようなことがないよう切り過ぎに注意します。後は、全体のバランスを見ながら濃さを生み出している、込み合った枝を適当な間隔が空くように除いていきます。その適当な間隔によって葉の輪郭も目についてくるようになりぱっと見が「ああ~、モミジだ~」という風になります。モミジらしさを生み出す適当な間隔というのは人によってまちまちな主観的な感覚ですので、これが難くまた面白いところでもあります。それで、未だにこれで完璧と言えるような経験はなく、もっと何かできた、一歩手前でやめるべきだったという気持ちが残ります。モミジの難しさと剪定の方法について伝わったでしょうか。モミジという木、本当に奥が深いです。私、モミジ大好きです。この木と永遠に付き合っていきたいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です