木が健全に育つために必要なのは先ず何よりも酸素であること、水をしっかり遣ることの意味は水に含まれている酸素をしっかりと根に与えるためであり、有機質の肥料をあげるとそれが微生物に横取りされた上に余計なガスまで出ることになり、肥料遣りが結果として木にとっては虐待行為になる場合があることをお話ししました。
では肥料はやらないで水だけ遣れば木は健全に育つのでしょうか? 答えは「いいえ」です。植物に与える肥料には窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)という肥料の三大要素があります。肥料の袋によく「8-8-8」とか書かれていますがその数字は肥料の全重量における各要素の比率(%)のことです。ですからもし20㎏の肥料の上記の数字が表示されているとしたら各要素が1.6㎏づつ含まれているということです。
窒素は植物の生長のために特に葉を大きくする栄養素のため俗に「葉肥」、リン酸は花や実をつけるのに影響するので「実肥」、カリウムは根の成長に不可欠なので「根肥」と呼ばれています。この3つの栄養素はあくまでも栄養素の比率で多量に必要とされる三大栄養素であってこれだけあれば育つというものではありません。カルシウム、マグネシウムなど合計17の栄養素が必要です。その中には栄養素の比率で0.02%以下しか必要のない鉄、モリブデン、マンガン、ホウ素といった微量栄養素があり、その名の通り微量しか必要でありません。でもその「ちょっと」が一つでも欠けるなら木は健康に育たないと言われています。ですから肥料遣りで大切なのは17の栄養素を全て必要とされている適量を遣ることです。
どうやったらそんな肥料遣りができるでしょうか? 一番いいのは木が自分で落としたもの(折れ枝、落ち葉)をそのまま根本に置いて土に返し樹木に戻してあげることです。自然の大原理はリサイクルです。植物を含めてすべての生き物は死ねば土に還ります。植物が死んで(落枝、落葉も死んだもの)土に溶け込んだ栄養素を吸収して植物は成長します。木に対してこの簡単な原理に沿って同じことをしてあげればよいわけです。ちょっと考えればこれは当然のことですね。
でも、これは木の周りが汚くなって庭の景観を損うという見た目の問題があります。私の管理している個人宅やマンションなどでは住民の方からだらしがないという苦情が来るでしょう。木の健康だけでなく、美的感覚を持つ人の感情も考慮しなくてはいけません。上述のリサイクルの原理と見た目の問題の2点を考慮した「良い落としどころ」はないでしょうか?
それは落ちた枝葉は若干(いい加減に)残しておくことです。つまり樹木の周りは綺麗にし過ぎない「適度な」清掃です。樹木は野菜などの作物とは違い多量の栄養素は必要としません。そうすれば失った分が100%還元されるわけではありませんが特定の微量栄養素以外は三大栄養素を含めて生育に必要な栄養素の大部分賄われますし、根元からの水分の蒸発を軽減するマルチングにもなります。
それに加えて私は木がどうしても不足しがちな微量栄養素を重点的に遣るようにしています。お勧めはHB101(フローラ社)というオオバコと松のエキスが含まれている活力剤です。1000~2000倍に水で薄めて使用しています。100㏄で2,400円と高価なのが難点ですが、肥料過多による根腐れなどの心配がなく安全で使い易く重宝しています。
最後に肥料遣りで大切なことをまとめます。肥料はやり過ぎることなく、微量栄養素を忘れることなくすべての栄養素をバランス良く遣ってください。「過ぎたるは及ばざるが如し」です。特定の栄養素が多過ぎると樹木は何らかの害を被ります。ではどうしたらいいのか? 木の根元は綺麗にし過ぎることなく多少枝葉を残し「適度に汚く」しておくことをお勧めします。時間をかけて自らの枝葉を分解、吸収させ適度な量の栄養分をリサイクルさせることです。

































