木が育つために必要なもの(2)

木が健全に育つために必要なのは先ず何よりも酸素であること、水をしっかり遣ることの意味は水に含まれている酸素をしっかりと根に与えるためであり、有機質の肥料をあげるとそれが微生物に横取りされた上に余計なガスまで出ることになり、肥料遣りが結果として木にとっては虐待行為になる場合があることをお話ししました。

では肥料はやらないで水だけ遣れば木は健全に育つのでしょうか? 答えは「いいえ」です。植物に与える肥料には窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)という肥料の三大要素があります。肥料の袋によく「8-8-8」とか書かれていますがその数字は肥料の全重量における各要素の比率(%)のことです。ですからもし20㎏の肥料の上記の数字が表示されているとしたら各要素が1.6㎏づつ含まれているということです。

窒素は植物の生長のために特に葉を大きくする栄養素のため俗に「葉肥」、リン酸は花や実をつけるのに影響するので「実肥」、カリウムは根の成長に不可欠なので「根肥」と呼ばれています。この3つの栄養素はあくまでも栄養素の比率で多量に必要とされる三大栄養素であってこれだけあれば育つというものではありません。カルシウム、マグネシウムなど合計17の栄養素が必要です。その中には栄養素の比率で0.02%以下しか必要のない鉄、モリブデン、マンガン、ホウ素といった微量栄養素があり、その名の通り微量しか必要でありません。でもその「ちょっと」が一つでも欠けるなら木は健康に育たないと言われています。ですから肥料遣りで大切なのは17の栄養素を全て必要とされている適量を遣ることです。

どうやったらそんな肥料遣りができるでしょうか? 一番いいのは木が自分で落としたもの(折れ枝、落ち葉)をそのまま根本に置いて土に返し樹木に戻してあげることです。自然の大原理はリサイクルです。植物を含めてすべての生き物は死ねば土に還ります。植物が死んで(落枝、落葉も死んだもの)土に溶け込んだ栄養素を吸収して植物は成長します。木に対してこの簡単な原理に沿って同じことをしてあげればよいわけです。ちょっと考えればこれは当然のことですね。

でも、これは木の周りが汚くなって庭の景観を損うという見た目の問題があります。私の管理している個人宅やマンションなどでは住民の方からだらしがないという苦情が来るでしょう。木の健康だけでなく、美的感覚を持つ人の感情も考慮しなくてはいけません。上述のリサイクルの原理と見た目の問題の2点を考慮した「良い落としどころ」はないでしょうか? 

それは落ちた枝葉は若干(いい加減に)残しておくことです。つまり樹木の周りは綺麗にし過ぎない「適度な」清掃です。樹木は野菜などの作物とは違い多量の栄養素は必要としません。そうすれば失った分が100%還元されるわけではありませんが特定の微量栄養素以外は三大栄養素を含めて生育に必要な栄養素の大部分賄われますし、根元からの水分の蒸発を軽減するマルチングにもなります。

 それに加えて私は木がどうしても不足しがちな微量栄養素を重点的に遣るようにしています。お勧めはHB101(フローラ社)というオオバコと松のエキスが含まれている活力剤です。1000~2000倍に水で薄めて使用しています。100㏄で2,400円と高価なのが難点ですが、肥料過多による根腐れなどの心配がなく安全で使い易く重宝しています。

最後に肥料遣りで大切なことをまとめます。肥料はやり過ぎることなく、微量栄養素を忘れることなくすべての栄養素をバランス良く遣ってください。「過ぎたるは及ばざるが如し」です。特定の栄養素が多過ぎると樹木は何らかの害を被ります。ではどうしたらいいのか? 木の根元は綺麗にし過ぎることなく多少枝葉を残し「適度に汚く」しておくことをお勧めします。時間をかけて自らの枝葉を分解、吸収させ適度な量の栄養分をリサイクルさせることです。

木が育つために必要なもの

木を植える時にどんな肥料を入れたらいいですか?とお客さんに聞かれることがあります。私の応えは「肥料はいりません」です。お客さんは「ええ、それで育つんですか」と不安な顔をされます。樹木を植える際に肥料は必要ないどころか下手にやったら有害で枯らす恐れがあります。どうしてでしょうか? 木が生きる為には何が最重要なのかをお話します。

木が生きる為に最も大切なものは「水」です。厳密に言うと水の中に含まれている「酸素」です。生きる為に先ず必要なのは酸素であること、これは植物も動物も基本的に同じです。植物は葉から二酸化炭素を吸っていますが根は水に溶け込んでいる酸素を吸っています。植えた木がちゃんと育っていくためには先ずは根がちゃんと伸びていかなければなりません。そのためには十分な酸素が必要なわけです。

肥料をやるとこの酸素が奪われてしまいます。どうしてかと言うと、肥料、特に有機肥料の場合はそれが根から吸収されるためには肥料が細かく分解される必要があります。分解される時に働くのは微生物や細菌です。これらは小さいとはいえ動物ですから分解のために働けば当然彼らは活動するために呼吸し酸素を必要とします。ということは、本来樹木の根が吸うはずの酸素を彼らに横取りされることになります。その結果、樹木は酸欠になって根を伸ばそうにも呼吸が浅くなって伸ばすのが難しくなります。最悪、根が死んで(根腐れ)しまうこともあります。

肥料を遣るということは恐ろしいことを樹木にしていることになるわけです。それで植え付けの際に肥料は必要ありません。水だけで十分です。水の中には十分な酸素が含まれているからです。有機肥料だけでなく腐葉土やピートモス等の土の中で分解するものは入れないようにしてください。有機物が分解する際には必ず微生物や細菌たちが働き酸素を奪います。酸素を奪うだけではなく、当然酸素を吸ったら彼らは炭酸ガスを吐くことになります。そうなると根は酸欠に加えて毒ガス攻撃を受けることになるのですから樹木にとっては大変なダメージになるわけです。

樹木のために、成長を願って肥料を遣れば木を枯らす恐れがあります。良かれと思ってやったことが裏目に出るのが植え付けの際の肥料遣りです。木を植える際には余計なことはせずに水をきちんと遣り最重要な酸素を十分に与えてあげましょう!

先ずは樹木が健全に成長するために最重要なことをお話ししましたが、木は酸素だけあればちゃんと育つという単純な話ではありません。他にも必要なものが色々ありますのでそれが何か順に少しづつお話ししますね。

強剪定

剪定といっても色々な程度があります。枝を切り詰める度合いの順に弱中強に分けるなら最大限まで小さくするのを強剪定と言います。 強剪定は一年中いつでもできるわけではありません。なぜかと言うと剪定という行為は樹木自体が維持している今のベストの状態を人為的に変えることを意味していて、樹木にとっては余計なお世話です。強剪定は最大限のストレスを樹木に与えることになります。つまり人間の都合で勝手に無理なことを樹木に強いるわけですからこちらもそこを思いやり可能な限り樹木にとってストレスが少ない時期を選んで剪定してあげなくてはなりません。

その時期はいつでしょうか? 冬です。特に落葉樹の場合は晩秋に葉を落とし冬期間は根から吸い上げる水の量も最低限で活動はごくわずかでエコモードになっており冬眠しているような状態です。その状態ならバッサリ切り落としても樹木にとってはストレスは少なくすみます。

逆に剪定する際に最も樹木にストレスを与える時期はいつかというと、それは夏です。夏の時期は樹木内に蓄えられているエネルギーを発散して枝葉を最大限に伸ばしています。その状況からこれから消費したエネルギーをいっぱいに開いた葉を通して樹木内に回収しようという時にバッサリと枝葉を切られてしまうならどうなるでしょうか。樹木は大変なダメージを受け一気に弱り病気にかかりやすくなったり、下手をすると枯れが入ってしまう場合があります。ですから、夏場の剪定は樹木にとって危険な時ですので剪定する際はできるだけ軽めの弱剪定が望ましいのです。

ここで確認しておきたいのは冬季には強剪定を行うのが良いということではありません。もし、強剪定を行う必要があるなら冬季が他の時期に比べて樹木に与えるダメージが少ないということです。どんな時期においても剪定は樹木にとっては不都合なもので必ず樹木にとっては大なり小なりストレスになるものです。ですから、冬季に強剪定を行う際にもなるだけ木にストレスを与えない、傷みが少ない切り方をしなければなりません。それがどんなものか実際の写真を下に紹介します。強剪定のイメージをつかんでいただける助けになれば嬉しいです。

ハンノキの大木です。隣の駐車場敷地に枝が越境しており枝折れなどで車を破損させる危険があるので自分の敷地内に収めるためにどうしても強剪定が必要です。見ての通り雪が主枝の元くらいまで積もっていますので使用する脚立も大きいのは必要なく剪定し易いです。枝には少し膨らんだ芽がついて切るポイントもわかりやすく剪定するには適期です。

枝先を1.5~2mほど切り詰めました。機械的にラインで切ってしまうとぶつ切りになりそこから腐朽菌が入り枯れる危険があり、また見た目も固い不自然な樹形になってしまいます。それで、切り詰める際には枝先に主枝に沿った外向きの細い枝を残すように切ります。先端の枝が細く主枝に沿っているので、全体的に柔らかさが残っていることに注目してくだい。

枝はどう切ったらよいのでしょうか?基本的に枝の太細に関係なく切り方には基本があります。枝分かれしているところのラインに沿ってよく切れる鋏や鋸を用いてスパット綺麗に切ることです。切断面がきれいだと切り口の治りも早いので腐朽菌(木を枯らす細菌、これが樹木内に一杯になるとキノコが表皮から出てきます)の侵入も最小限にとどめることができます。一般では切り口が大きい場合はそこに殺菌剤や癒合剤を塗るよう勧められていますが私見では余り効果がないばかりかかえって治りを遅くしたり阻害してしまうように思えるので私は一切使用しません。動物も樹木という植物も自然治癒力が備わっていますのでそれに任せて余計な小細工はしないのが一番と思います。それよりも枝を切る際には正しい角度で綺麗に切ることの方が大切です。基本的な剪定の仕方を写真に説明を加えて記しましたので参考になさってください。

剪定の輪郭ライン

強い剪定ですので可能な限り枝の長さを切り詰めます。その際は、樹冠の内側の枝分かれを見て可能な限り幹に近い枝別れの部位の仕上がりが貧相にならないところで切ります。その際には樹幹の全体に目を向け枝がラインを結ぶ枝があるのか全体に目を向け剪定のプランを立てます。そこが基準となり下から上に向かってラインを意識して(赤ライン)切り上げていきます。(樹木の幹の頂上の枝を決めてから順に下に下がっていく方法が一般的ですが、私は写真のように下から上に向けて切り上げます。その方が枝の流れが見えて切るべき部分が見えやすいです。また切った枝を落とす際にそれが下の枝に引っかからないので作業がスムーズに進みます。その際に仕上がりのラインを想像してそのラインに近い外向き枝を見つけます。ラインより長い場合はライン上の付近の枝の外芽の部分で切ります。ラインより外側の場合はそれが目立って不格好ですが、目は枝先を結んだ線をラインとしてみますのでラインより内側であれば多少短くても気になりません。

枝の基本的な切り方

枝先に注目してください。枝の先端には細い枝で仕上がっています。枝先の枝のライン(青ライン)と元の枝の切り口のライン(赤ライン)が一致した直線で平行になっています。もし、枝元の切り口がこれより長く残ってしまうと切り口の組織が盛り上がりそこをふさいで直そうとしても、その中途半端に残った枝が邪魔して塞がらなくなり、そこから腐朽菌が入り枝を枯らしてしまう恐れがあります。そして、時の経過と共に腐朽菌は主枝から幹に侵入して結果として樹木本体を枯らしてしまうことになります。でも、このように正しいラインで切ると切り口は癒合組織(カルス)に囲まれ綺麗に塞がり治って腐朽菌の侵入を留めることができます。細い枝に関しては外芽(芽が外向きについている)の部分で切ります。

強剪定は枝の量を多く減らすのでダメージが大きいため可能な限り冬季に行うのが好ましですが、特に桜は切り口が治りにくくデリケートと言われていますので強剪定する際は冬に限ります。下は上記で紹介した考え方で強剪定した実例をご紹介します。前後を比較してどこで切っているのかに注目してください。

家側に伸びており壁を傷つけるおそれがあるので家との間隔を余裕をもってとるために強剪定する必要があります。

かなり小さくなりました。枝の切り方は先端に細い枝が残るように仕上げて切り口も枝のラインにそろえていす。

冬期間の強剪定の利点を最後にお話します。それは、枝の処理が楽であることです。冬以外は枝に葉がついているため葉が邪魔して枝の輪郭が見にくいですが、冬は葉がないので枝ぶりがはっきりと見えて剪定し易いです。加えて枝を片付ける際にも枝に葉がなく、特に冬場は根から水を吸い上げる量が少なく枝の比重も軽いので片付けの手間も比較的楽です。更に、虫もまだいないといいうのもいいですね。

結論として樹木は生き物なのでいきなり極端に小さくするのは大きなストレスをかけることになり木を弱らせてしまうのでお勧めしませんが、どうしてもバッサリと小さくしなくてはならない場合は強剪定を冬場に行い、正しい位置で枝を丁寧に切るということを覚えておいてください。

冬囲い-晒竹

冬囲いの方法はいくつかあります。ここ留萌では丸太を支えにブルーシートで被うのが多く見られますが、屋根から雪の直撃を受けるという場合を除けばそこまでがっちりしなくてもいいかなと思います。以前私が住んでいた札幌では主に小木は根曲がり竹、中木は晒竹を支えにして縄巻きにしていました。冬囲いの目的である雪の圧力から樹木を守り、冬装束という美観からしてその方法もお勧めです。特に晒竹は冬囲い資材としては最高と言えるほど美しいです。ベージュの艶のある色と節が適度な間隔で並びすらっと伸びた姿は自然界の創造主が与えてくださった贈りものの1つです。

今年、お客様のお庭にシンボルツリーとしてナツツバキを植えました。大切な家の象徴となる木ですのでしっかりと守ると同時にシンボルとしての見栄えも考慮しなくてはなりません。ここで最高に美しい晒竹を使わない手はありません。では、その晒竹を使っての冬囲の方法についてお客様に写真をアップする許可をいただきましたのでこれからご紹介しますね。 

施工前:

2.5mの株立ちのナツツバキです。余談ですが丸太の植栽マスはお客様がDIYでされました。変化があり、樹木によく合ってとてもお上手センスいいですね。

冬囲い資材:晒竹3.9m×4本、縄

1.下縛り:

冬囲いの基本ですが、雪が覆う面積を小さくするために枝をたたむようにようにして縄で縛ります。その際に枝を折らないように気をつけます。全体をすぼめるために高さに応じて何段かに分けて縛ります(この場合は3段)。

2.竹を立てる:

竹を刺す際はが倒れないような強度を出すために金テコなどを使い竹の下穴を少し樹木寄りに斜めに空けます(最低15㎝は必要)。この場合は4本分の4つの下穴は基本的に正方形になります。

3.竹を組む:

竹の交点が樹木の上になるように組みます。竹の組み方は1本竹を基準にしてその上に時計回りの方向に順に上にのせて揃えます。その際樹木の頂点よりも余裕を持って上に組むようにすると見た目のバランスが良くなります。

4.竹の頂点を縛る:

揃えた竹を縄で2重に縛り、組んだ竹の間に縄を下から上に通し引き上げてがっちり締まるように巻きます。最後は男結び(造園の基本的な縛り方)で縛ります。
結びの完成:2重に回した縄の間に縄を通しています。

5.下縄を巻く:

竹に縄を回して巻き付けます。その際は一番下から行います。縄を回す位置を決めたら、回す長さよりも少し長め縄を測り順に回していきます。
縄を回す際には緩まないように竹を中心に向けて少し押して圧力がかかるようにします。そうすることで竹の根元がしっかりして冬囲いの強度が増します。縄を竹に巻く際は下から上に縄を押さえるようにして縄の滑りを止めます。

同じ要領で下から上に適当な間隔で縄を巻いていきます。その際は一番下の縄のように竹を押さないで縄を竹に添わせるようにして巻きます。その際は縄がたるまないように直線に見えるように注意します。

6.完成:

完成です! シンボルツリーが影を潜めてシンボルタワーになりました!! この場合は縄は4段に巻いていますが何段に巻くかは高さによって決まります。美観面からは等間隔がよいですが、その時の状況、ご自分のセンスで自由に決めてください。

以上のような感じですが参考になったでしょうか。このナツツバキ君、今年さわやかな薄緑の葉を広げ、夏に白の可愛い花を次々に咲かせ、秋には鮮やかな真っ赤な紅葉で有終の美を飾りました。その後、葉を落とし、冬になった今お休みの最中ですが、今度はこちらが今までの働きに感謝を表す番です。冬囲いの目的は冬の間、樹木がゆっくりと安心して休めるよう優しく守り、その存在を示してあげることです。「ナツツバキ君、今年はご苦労様春までゆっくり休んでください」。そんな感謝の気持ちがこの冬囲いから伝わったら嬉しいですね。

モミジの剪定

剪定の中で一番難しいのはどの木ですかと聞かれることがあります。造園家の得手不得手は様々ですが、一般的によく言われるのは「モミジ」です。その理由は剪定後にモミジの自然樹形のしなやかさ、風に揺れるような雰囲気を残すのが難しいからです。モミジの自然樹形は下の写真のような感じです。

モミジの自然樹形

北大の庭にあるモミジの自然樹形です。横広に枝がしなやかに伸び、輪郭が適当に不揃いで柔らかい曲線が連なり,枝の間隔が適度にあり、薄っすら枝が見えて、後景もチラチラ見えることにより景色に奥行を生じさせ、全体的に何とも言えないふんわり、ゆったり感を生み出していますね。これ見てて癒されませんか。剪定後もこの形を維持できればいいですね。ちなみに、このモミジ恐らく剪定していません。自分の自然な形を保つために不要な枝をモミジが自分で落とした結果の形です。樹木には生きるだけでなく、美しさを保つためのしくみがちゃんと植えこまれています。自然は素晴らしい、驚異の世界ですね。

剪定とはざっくり簡単に言うと、木のサイズや枝葉の濃度を少なくすることなので、そのために枝葉の混みあったところの枝を抜いたり、枝先を切ることになります。そうするとどうしても「カチッ」とした硬い雰囲気になりがちです。それは、モミジの自然樹形とは対極にあるのでそうならないような切り方が必要です。ではどうしたらよいのか。「百聞は一見に如かず」。先ず下の写真をご覧になっていただき剪定前と後のモミジを見比べてください。そして違いを生み出している要素が何か考えてみてください。

剪定前                   

これはヤマモミジです。なんとなく自然樹形がイメージできるでしょうか。横にゆったり広がる枝の流れがモミジらしさです。この写真では上向きの枝がその自然樹形を乱しています。

剪定後

上向きの枝を除き、濃さの原因となっている重なっている枝、などを除き、幹枝の流れや葉の輪郭がある程度はっきりするように不要な枝をのぞきました。薄っすら向こうが見えるくらいが丁度いいです。

剪定前、後を見比べていかがでしょうか。剪定後の方が前に比べて、庭の奥行きが出ているように感じませんか。私が心掛けているのは、モミジの場合大切なのは「切りました」と分かるような剪定にならないということです。依頼主はもちろん剪定前の姿を知っているので、剪定後との違いが判るのですが、剪定前の姿を知らない人が見て切ったという感じがしない、そのままその姿で自然にそこにいたと感じるような剪定です。

剪定後の写真を見て何か気づかれたでしょうか。枝先を切っていません。なぜか?枝先を切ると自然な流れが止まり「固まる」からです。では、どうやってサイズを小さくするのか、不用な枝を懐までたどって、切ることです。特にモミジの自然樹形を乱している真上に立ち上がっている枝は枝元までたどってきっちり切ります。ただ、樹形の中で穴が開くようなことがないよう切り過ぎに注意します。後は、全体のバランスを見ながら濃さを生み出している、込み合った枝を適当な間隔が空くように除いていきます。その適当な間隔によって葉の輪郭も目についてくるようになりぱっと見が「ああ~、モミジだ~」という風になります。モミジらしさを生み出す適当な間隔というのは人によってまちまちな主観的な感覚ですので、これが難くまた面白いところでもあります。それで、未だにこれで完璧と言えるような経験はなく、もっと何かできた、一歩手前でやめるべきだったという気持ちが残ります。モミジの難しさと剪定の方法について伝わったでしょうか。モミジという木、本当に奥が深いです。私、モミジ大好きです。この木と永遠に付き合っていきたいですね。

木の植え方

これから木の正しい植え方を説明します。この前お話ししたように木の生命力は凄くて、死にそうな木を適当に植えても根付いてしっかり生きるので「恐れずに植えましょう」とお話ししました。ただ、どうぜ植えるなら枯れるリスクが限りなく0に近く、永く健やかに育つような植え方をしたいですね。これから木が喜ぶ植え方をご紹介します。その例として紹介するのは、庭の主役となるシンボルツリーとしてお勧めするナツツバキ(2.5m 株立ち)の植栽手順です。これは私流の植え方で、一般的な植え方とは違う部分も多々あり他の造園家の皆さんからそこは違う、自分ならこうする、というご意見もあるかと思いますが、そうする根拠も記しましたので一つの考え方として参考になれば嬉しいです。

1. 植穴掘り: 十分な大きさの植穴を掘る

植えるナツツバキの根鉢の大きさは幅45㎝、高さ25㎝。植穴は大きさは幅は根鉢の2倍、深さは根鉢の高さよりも最低15㎝必要です。その基準でこの植穴は幅100㎝、深さ40㎝。土壌は粘土質の植栽には不都合な土のため黒土を客土(植栽に適した良質の土)を入れました。

2.植え床の土入れ:

客土(黒土)を植穴の中央に入れる。まずこれをしないと、後では根鉢の下に土を入れにくいため、根鉢の下に空間ができてそこの根が乾く結果、樹木の生育不良を招く恐れがある。この土を入れるおかげで樹木の向きを調整しやすくもなる。

3.据え置き1:筵を解く

根鉢を覆っている筵は解く。根鉢の崩れを防ぐために解かずにこのまま植える場合もあるが、根の伸長や根鉢と客土との活着などを考えると可能な限り解くことが望ましい

4. 据え置き2:位置決め(樹木の向き、傾きを決める)

根鉢の幅が45㎝、植穴の幅は100㎝。もちろん植穴の幅は広ければ広いほど良いが、植え付けに客土を使用する際は掘り出した土の処理が大変なので、1.で説明した基準の植穴が適当。

5. 土入れ:

客土を植穴と根鉢の周りに入れる。この際に水極めと言って、土を植穴に半分ほど入れた後に水を注ぎ、土を泥のようにぐちゃぐちゃにして木を揺すりながら土と根鉢の間の隙間を埋める植え付け方法があるが、私はそれが嫌い。理由は土をこねることによって土が後に固まって根の伸長の妨げになる恐れがあるから。もちろん根鉢の周りに隙間が生じるのは良くないが根鉢周りはできるだけ柔らかい状態が望ましい。

6. 根鉢固め:根鉢周りの土を適度な硬さに固める。

根鉢の周りの土を固める際に、足の踵でガンガン踏みつけて固めるのが一般的だが私はしない。理由は5.で説明した通り根の成長にとって硬い土は良くない。土には空気、水が通るための適度な隙間が必要。土木は固く固めるのが基本だが造園はその逆。もちろん、緩すぎて木が倒れては困るが、適度にふんわりと植えるのが好ましい。そこに作工物と生き物の違いがある。

7. 水遣り:

植え付けの際の水遣りは『木が腹を壊すほど水をたっぷりやれ』とか言われるが、水遣りの方法は植え付けの時期によって変わってくる。この場合は植え付けの時期が秋(10月中旬)で葉が紅葉しており、樹木は余り水を欲しないので大量の水は必要なくむしろ害になるので上呂で10リットル程で根鉢と土を密着させるだけで十分。

8. 水遣り後の追い土:

この部分は結構重要。水遣り後には水の通り道ができ、そこから空気が入り根が乾く恐れがある。根鉢の上に客土をサラッとかけてその通り道を塞ぐ。

9. 鉢の仕上げと水鉢の形成:

根鉢の表面を成形し周りに水鉢(根鉢の外周部分を土手のように盛り上げて水遣りの際に周りに水が逃げないようにし、根株の外周の根に水が浸透するようにする。

10. マルチング:根鉢の保護と美観

可能ならマルチングをお勧めします。写真のマルチング材は黒松の樹皮。これを敷くことによって根の乾燥を防ぐ。雑草防止にもなる。土と接触している部分は少しづつ腐食し土に返り適度な肥料となる。見た目も美しく樹木が引き立つ。ただし、幹と接触させないように注意する。

11. 完成:

庭のシンボルツリーとして完成! 根の生育と見栄えのために高植(根鉢の上面を地際より高く植えること)ぎみに植えました。支柱は基本的にしない。木が多少揺れ動くことで根はそれを支えようとしっかり根を張ろうとする。適度な刺激が必要(この点はまたどこかで話します)。

木を植える

3年前に剪定(木を切る)についての話を書いて以来、ほんと久しぶりにブログを書きます。これから木を植えるためにどうしたらいいのかお話しします。

まず、言いたいことは木は生き物であるということです。これは何を意味するでしょうか。生き物には皆生存本能が組み込まれていてるので、当然、生き物である木は生きるためにベストを尽くします。

実例をお話しします。3年前、こちらで起業してまもなく、既存の樹木5株を除去し、そこを整地して化粧砂利を敷いて枯山水(石などの無生物で庭を表現する技法)風の花壇を作る仕事をいただきました。そこに植わっていたナツツバキは生きるには極限の狭さの、硬い土壌のスペースに押し込められていたために掘り起こしたところ根が小さく、貧弱でこれで、よく生きていたなという状態でした。他で使えるような代物ではありませんでしたが処分してしまうのもかわいそうなので、とりあえず家に持ち帰り、庭の空きスペースに適当に、倒れない程度の土をかけて植えておきました。こちらとしては、根が無いも同然の状態でしたので、その後の健全な成長など全く期待せず、この木たちには申し訳ないけど、死んで当然生きたら奇跡と思いました。

その後、どうなったか? いつの間にかしっかり根を張ったようで、つややかな葉を展開させ、次の年には沢山の白く可愛い花を咲かせました。家族の者も「大したもんだね」とその生命力に感心していました。

あれから、3年、今年は幹から芽吹き新たな枝を伸ばし、自然な樹形に近づこうと頑張っています。家の庭に植えた5株全部、根から土が全部落ち、根が無いも同然の瀕死たった者も含めて、皆どっこい、しっかり生きて我が家の庭の一員として風景を彩ってくれています。

この例から言いたいのは、木は生きるために自分のベストを尽くすので、そう簡単には死なず、私たちが思う以上に強いということです。これを知っていると、木を植える際にあまり神経質にならなくてすみます。お金を出して木を買って植えても、枯らしたらどうしようという心配から解放されます。

ですから、木を植えることを恐れないでください。木の生命力を信じてどんどん木を植えて楽しんでください。もっと楽に考えて、適当に植えても木は育つものだということを知ってください。

ただ、一つ言いたいことがあります。どうせ、植えるなら木が喜ぶ、望むような植え方をしてほしいということです。これまで適当でもいいと言っておいて、ここに来て、適当ではダメとは矛盾しているようですが、このサイトのテーマである樹木が永く健やかに「自然風に美しく」成長を続けるためには正しい植え方を知る必要があります。それがどんなものかこれからお話ししますね。

冬囲い

冬囲いの目的は何でしょうか。それは、雪から樹木を守ることです。雪の何から守るのでしょうか。それは、雪の重みです。植え付け一年目でまだ十分に根が張っていないという場合以外、注意するのはこの一点です。雪の重みで潰されないように守ること、これが冬囲いの主な目的です。基本的に、樹木にとって雪が害になるのはその重さによる破損だけです。

では、寒さについてはどうでしょうか。樹木にとって雪は冷たいのではないでしょうか。雪の冷たさから樹木を守る必要はありませんか。その必要ありません。雪は樹木にとって温かく、優しい毛布のようなものです。もちろん、屋根から雪が落ち樹木を直撃するような状況なら、それは樹木にとって凶器になりますので、その攻撃から守るためには樹木の上に丸太や筵などの保護材で覆ってガッチリ守る必要もあるでしょう。そういう危険な場所ではなく、普通に雪が下から順に上に積もる場所であるなら、樹木の上の雪の重みに耐えられるようにしてあげればいいのです。樹木を寒さから守るために、ビニールシートなどの覆いは特に必要なく、それはむしろ樹木にとって害になる場合があります。

では、冬囲いとして具体的に何ができるでしょうか。実際の作業として2つあります。まずは、雪の重みを軽減するために、雪が載る量を少なくする工夫が必要です。そのために、樹木の表面積を可能な限り小さくしなくてはなりません。そのために、枝を縄などで適度に縛って小さくまとめます。もう一つは、、雪の重みが直接樹木にかからないように外に分散させるために竹などで囲います。当然、そこには隙間ができて樹木は雪で覆われることになりますが、樹木にとってはそれがベストの状態です。つまり、雪の重みから守られながら、雪の毛布にくるまれることで、風による乾燥からも保護されるからです。

樹木が拷問にあっているような、痛々しい状況を目にすることがあります。まず目につくのは、樹木がブルーシートなどのビニール素材でぐるぐるに巻かれていることです。それに伴い、だいたい、樹木を締めすぎです。これにより、枝折れや樹木に変な癖がついて樹形が乱れることになります。まるで、電柱などの作工物を扱うような感覚ですね。これ、ほとんど生き物扱いされていません。特に問題なのは春先です。雪で覆われているうちはいいのですが、春先、太陽の熱で中が蒸れて、樹木は大変な目に遭っています。これは悲しい現実です。

冬囲いの目的は何か、樹木を雪のどんな要素から守る必要があるかを冷静に考えれば、大切な愛すべき樹木に対して余計なことをせずに、本当に必要なことだけをやってあげることができます。そのようにして、本当の意味で樹木を守ってあげたいですね。一例として、ドウダンツツジの冬囲いの例を下にアップしました。参考になれば嬉しいです。

作業1:縄で樹木を縛り、雪が載る面積を小さくする
適度に締め、枝を折らないように締めすぎに注意
作業2:根曲がり竹で囲う。覆いは必要なし
樹木は根曲がり竹により上からの雪の直接の重みから守られ、雪という優しい毛布で覆われることで風による乾燥から保護される。余計な覆いがないので、春先の雪解けとともに、徐々に自然に姿を現すことで蒸れて傷むこともない。雪で覆われるまでの間は紅葉が楽しめ、美観的にも良い

剪定の基本

樹木にはそれぞれ自然樹形というものがります、それはだいたい樹種ごとに決まっていて、その樹のその時点での自然な形があります。

私は剪定する前に樹木をゆっくりと全体を眺めてその樹の剪定後の自然樹形を思い描きます。思い描くのはその樹の本来の美しい姿です。それは当然、人が見て美しいということです。そうなると、美しさを妨げる枝を切らなければなりません。

造園用語で基本剪定という言葉があり、上に立っている枝、下向きの枝、幹の方に逆に向かっている枝などを忌み枝と言います。 剪定の基本として、忌み枝は優先的に切ります。 忌み枝とは人の側からの観点で言う言葉であり、木にとっては忌み枝などではなく必要な枝なのです。

それで、造園家は両方の折り合いをつけ、ちょうどいい「落としどころ」を探さなくてはなりません。形としては忌み枝に見えても切らないで残すといった加減が求められます。 それは、人の見た目だけでなく木が生きるということも考えなくてはならないからです。

剪定で大切なのは 「人と木の両方の言い分を聴いて落とし所を見つける」ということではないでしょうか。

でも、これは言うのは簡単ですが、行うは未だに難しですね。

自然風に美しく

8月に留萌に移転してもう2カ月近くになります。こちらで造園業を再開する準備も順調に進んでいます。今年の造園シーズンも後わずかですが、今年は来年に向けて基礎ができれば良しと割り切っております。

このサイトのテーマである「自然風に美しく」という言葉の意味についてお話させていただきます

前にお話しましたが樹木はそれぞれに特有の自然樹形というものがあります。その木の持つ一番落ち着く形とでも言いましょうか、見ていて人に安らぎを与える自然な形があるのです。

今までいろんな庭を見てきましたが、その中にはオンコも紅葉もみな”ガチ”と刈り込んでいて葉の色は違いますが同じように見えてしまい、一瞬何の樹なのか分らないことがあります。それを目にするとわたしはとても悲しくなってしまうのです。お庭の持ち主がもしこんな話を聞いたら、それこそ余計なお世話とおっしゃることと思いますが、私は何とも言えない寂しいもどかしい気持ちになります。できれば、その木を本来の自然な形で美しく輝かせてあげたいという衝動が湧いて来るのです。

造園家としてもう30年近くやってきた中で思うことは庭の役割は人の心を癒し安らぎを与え、日常の生活を豊かに彩るためのものであり、そのためには庭という舞台の役者である樹木はそれぞれの持ち味をだし、できる限り自然に美しくなければならないというものです。

電動バリカンなどを使って幾何学的に刈り込めば早くて、きちっとした感じてその時には綺麗に見えるかもしれませんし、お客さんも仕事をしてもらったと満足するかもしれません。

確かにオンコなどの針葉樹はこれでもいいかなとは思いますが、モミジにこれをやってしまうと味気ないです。モミジは風にゆったりとゆらぐような柔らかい枝が命です。そのような枝を生かす切り方をすべきなのです。

もちろん人間がすることですのでベストはあり得ないのですがよりベストに近い仕事を行おうという姿勢はお客様からお金を頂く以上当然持つべきかと思います。

そのベストに近づけるキーワードが私にとっては、その樹木にとっての「自然風に美しく」です。その作業の結果として庭の主人のお客様にも幸せな気持ちを持っていただければ幸いです。